環境研究総合推進費 | PM2.5の脳循環および脳梗塞予後に及ぼす影響の解析

①微小粒子状物質(PM2.5)とは?

1-1. PM2.5の概要

現在、世界では大気汚染による健康被害が問題になっており、全世界の人口の約90%は汚染された大気の中で生活をしていると言われています(WHO, 2018年5月2日)。大気中を浮遊する微粒子は粒子状物質(Particle matter; PM)と呼ばれ、肺や気道などの呼吸器に沈着することで呼吸器系疾患の予後悪化などの健康被害をもたらすことが知られています。

PMはその粒径によって分類されており、直径 2.5 〜 10 μm 程度の比較的大きな粗大粒子を浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter; SPM)、直径 2.5 μm以下の非常に小さな微粒子を微小粒子状物質(PM2.5)と呼びます。

Fig.1-1
図1-1. PM2.5の大きさ


1-2. PM2.5の生成原因

SPMやPM2.5は自動車・船舶・航空機からの排出ガスや工場からのばい煙・粉じんなどの人為起源により生成されるほか、土壌・海塩・火山活動による自然起源によっても生成されます。粗大粒子であるSPMは自然由来の粒子が多く、生体への毒性が低いとされています。

一方、PM2.5の約7割は人為由来であり*、生成の過程で有害物質が多く付着するため毒性が高いと言われています。また、PM2.5は身体の奥深くに入り込むことからも、SPMに比べて毒性が高いことが懸念されています。

* 国内の PM2.5 総排出量(2015年)約11.5万トン のうち 8万トン は自動車・船舶・航空機由来である(環境省「微小粒子状物質等専門委員会 第12回 配布資料」, 2020年6月26日)

Fig.1-2
図1-2. PM2.5の生成原因


1-3. 日本国内の状況

大気中のPM2.5濃度を管理するため、本邦ではPM2.5の環境基準値を下記のように設定しています。

【1年平均値:15 μg/㎥ 以下 かつ 1日平均値:35 μg/㎥ 以下】(平成21年9月設定)

平成30年度の全国の測定地点での年平均値は 約12 μg/㎥ であり、上記の環境基準値を下回っていることが報告されています。しかし、日平均値では基準値を超過する日も多く*、依然としてPM2.5の濃度は問題になっています。

* 平成30年7月に日平均値の基準値を超過した延べ日数:708日(環境省「微小粒子状物質等専門委員会 第12回 配布資料」, 2020年6月26日)

Fig.1-3

図1-3. 平成30年度の日平均値が 35 μg/㎥ を超過した延べ日数(有効測定局 1,050)
(『環境省 微小粒子状物質等専門委員会 第12回 配布資料』を改変)